王太子様の策略に、まんまと嵌められまして~一夜の過ち、一生の縁~

「いまさらなにを言い出すと思えば……。聞くほどでもない、私はビアンカを愛しています。この思いは嘘偽りなんてない。幻想でもない。好きになるのに身分なんて関係ありません。私はあなたという人間を心の底から愛しているんです。どうしてそんな私を落胆させるようなことを聞くのですか!」

「どうしても拭えない疑問だったのです。身体を重ねてしまったから、そういった幻想に捉われているのではないかって、愛していると思い込んでいるだけではないかと思っていました。だからこそ、改めてファリス様の口から聞きたかったのです。……私を好きだと」

じっと、ファリス様の顔を見据えた。

ファリス様は、グッと唇を噛みしめて怒りを堪えているような表情だったが、やがてゆるりとそれは和らいでいく。

そして、ふう、と息を吐いた。


「……分かりましたか?私の気持ちが」

「……はい。ここが締めつけられるほどに」


そう言いながら胸元に手をあてる。

途端、涙がぽろぽろと零れ出した。




その涙がなんなのか、分からない。

自然と溢れてしまったから。


ただ、手をあてた胸の部分が温かくて、それでいて少し切なくて、嬉しくて。

ファリス様の気持ち、自分の思い。

色んなものが自分の心の中に作用していく。

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