王太子様の策略に、まんまと嵌められまして~一夜の過ち、一生の縁~
――そのとき、気がついた。
私、ファリス様に惹かれている。
好きになり始めている。
だって今までは戸惑いのものでしかなかったファリス様の思いが、今ではこんなに自分の心を満たしてくれて、嬉しいと感じるんだもの。
泣きながらも、私はファリス様に向けて笑みを浮かべた。
きっとこれが幸せってことなのだろう。
悲しみの涙じゃない。
これは幸せだからこそ流れる涙なのだと。
ファリス様はそんな私を、また強く抱きしめる。
「その笑顔は反則です、ビアンカ」
「素直に嬉しいのです。正直、私はファリス様が好きなのか、好きになれるのか分からなかった。でも、ファリス様からその言葉を改めて聞き、確信しました。こんなに嬉しく、幸せだと感じるということは、少なからず私はファリス様に惹かれているということ。きっと私も好きなのだと思いますわ」
その言葉に髪に埋めていた顔を上げ、ファリス様は驚いたような表情で私の顔を見下ろす。
少しの間、そのままじっと見つめたまま。
ファリス様はなにか言いたげだったが、言葉にしたくてもできないような感じだった。