王太子様の策略に、まんまと嵌められまして~一夜の過ち、一生の縁~
「ファリス様……?」

その視線に耐え切れず、ファリス様の名を呼ぶ。

「あ……、すみません少し動揺して。まさかビアンカから、そんな言葉を聞けるとは思っていませんでしたから……。もっと先のことになると覚悟していました。もしくは一生聞けないままかと。そのくらい、自分よがりだったので」

「王妃様は私に仰ってくださいました、初めは戸惑いしかなかった。でもいつしか居心地の良いものに変わり、そして今では国王様の愛なしでは生きていけない、と。私もいつの間にか戸惑いから変化しつつあるのです。未来、ファリス様の愛なしでは生きていけなくなるくらい、私に愛を教えてください」

ファリス様は満面の笑みで頷く。

「もちろんです、愛しのビアンカ。これからふたりでゆっくりと愛を育てていきましょう」


ふと、窓の外に目がいった。

あるものが目に映り、驚きと共に「あっ!」と声を上げる。

「どうしました?」

「そ、外を見てください!まさかこんな季節外れに……」

それは、今の時期ではありえない光景だった。

空は青く澄んでいるのに、チラチラと白きものが降り落ちている。

「雪、ですか」

「もう夏も近いというのに、どうして……」

「私の生きていて初めての経験です。この国は高い山が近くにあり、そこから冷たい空気が流れ気温が低くなることはありますが、しかしこの季節に雪だなんて」

そう言ったところで突然、ファリス様はなにかに気づいたような表情を浮かべる。

「――ああ、そうか。きっと私たちを祝福して、神がわざと降らせたかもしれませんね」

「ええ?神様がですか?」

「そう。結婚式でも祝福の白い羽を降らすでしょう?神は雪を羽に見立てて降らせたのかもしれません」

「祝福の……」

雪は少しの間キラキラと優しく降り注ぎ、やがて何事もなかったように消え、いつもの景色に戻る。


本当に、不思議な出来事だった。

ファリス様の言う通り、もしかしたらわざと神様が降らせたものかもしれない。

そう考えると、心の中がじわりと温かくなった。





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