王太子様の策略に、まんまと嵌められまして~一夜の過ち、一生の縁~

――それから、数日経ち。

いよいよ私たちのお披露目会が開かれる日となった。


ファリス様に思いを告げてから、それまで苦痛だったマナーのレッスンも苦ではなくなり、それなりに大変ではあったけれど、なんとか今日までやり通すことができた。

きっとそこまで頑張れたのは、どれだけ辛くともファリス様が傍にいてくれて、私を励ましてくれ、その気持ちを、素直に受け止めることができるようになったからだと思う。

そしてなにより、私自身の気持ちも定まったこと。

今まで覚悟していたようで、どこか逃げようとしていた部分があった。

でも今は違う。

この先、どんな困難があろうとファリス様の傍から離れない。その覚悟が定まった。
そのためには、どんなことも受け入れ、ものにしていかなきゃならないと自覚したから。

それは私のためでもあり、ファリス様のためでもある。

隣でファリス様が笑顔でいてくれるために、私は努力していくつもり。


「準備ができましたか?さあ、行きましょう」

正装に身を包んだファリス様が、私に手を差し伸べてくれる。

私はその手を躊躇うことなく取った。


向かう先は、未来への一歩。

その先にはどんなことが待っているだろう?


期待もあり、でもほんの少しだけ、不安もあり。


それでも、ファリス様と一緒なら。


きっと輝かしい世界が広がっているのだと思うわ……。
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