獣は少女を愛し、少女は獣を愛した
「グ、ラン?」
蒸気を発してどんどん体が縮んでいき、みるみるうちに醜い姿になっていく僕を見て、ミユは目を見開く。
急いで帰ってきたので、長い間竜の姿になれない僕は、すぐに半獣に戻ってしまった。
「ミユ、見ないで!こんなに醜い姿をその綺麗な目に写しちゃダメだ!」
ミユの目が僕を写すことに耐えられなくて、僕は思わず背を向ける。
「グラン...」
ミユがそう言った途端、背中が温かくなった。
ミユが僕を抱きしめたのだ。
「ミユ、離して。汚いよ」
僕は、言う。そう言えば、体を水で流していない。それほどに急いでいた。
「いいえ、汚くないわ。」
僕の言葉を否定するミユ。
「醜い僕に近寄らないで」
耐えられない。胸が苦しい。やめて、ミユ。こんな姿の僕を見るのはやめて。
「醜くなんてない」
「やめてよ。自分でもわかってるんだから」
「いいえ、そんなことない。
初めて目を開いてグランを見た時、変だと思ったの。」
ふふ、と笑ってミユが言う。
「え?」
僕は思わず聞き返した。
「声の質が違っていたし、何だか遠かったわ。
あなたは普段、この姿で過ごしていたんでしょう?」
後ろから抱きしめられているから、ミユの表情が読めない。でも、声音で笑っていることがわかる。
「うん」
そう言いながら僕は、抱きついていたミユの手を掴み静かに外す。ミユの顔を見たかった。
「なら、私が醜いだなんて思うわけが無いわ。
私は、あなたのこの姿が世界中のどれよりも、大好き」
ゆっくりと振り返った僕にミユはそう言って微笑んだ。