獣は少女を愛し、少女は獣を愛した
「そう言えばグラン、あなたどんな見た目をしているの?」
「えーと、普段は半獣なんだ。そっちの方がここで暮らしやすいから。」
少しだけ嘘をつく。
〝普段は〟じゃなくて〝いつも〟だ。
僕は醜い出来損ないだから、長い時間竜になることが出来ない。
「そうなの?竜と人間が半分半分と考えてもいい?
とってもカッコいいのでしょうね...」
ミユはうっとりとした顔をする。
期待しているミユに申し訳ないが、全くかっこよくなんてない。
顔や手足には鱗、口には牙があり、遠目で見ればただの人間、近くで見れば出来損ない。
「そんなことないよ
ただ醜いだけさ」
「いいえ。醜い人間なんていないわ」
「僕は人間じゃないよ...」
「あら、半分は人間なんでしょう?
それでも、醜い者なんてどこにもないのよ」
君はなんでそんなに大人なんだい?
つい、そう問いたくなる。
たった10くらいの少女が、今まで何を見てきたのだろう。
何を感じてきたのだろう。