大人の恋をしませんか?
妙に気恥ずかしくなったのを隠すようにジョッキに手を伸ばした私に、爆弾が落ちた。

「じゃあさ、俺と結婚したら良くない?」

予想外過ぎて、威力が大き過ぎて、とっさに反応出来ない。数秒のタイムラグでようやく出せたのは「は?」という音だけ。

「だから、俺と結婚すればいいんだよ。いきなり結婚がハードル高いなら、最初は同棲でもいいけど」

「ばっ……だ…なんっ……」

「馬鹿じゃないっ!?」「誰が?誰とよ!」「何言ってんのよ」言いたい事はいっぱい浮かぶのに、何一つまともに出てこない。きっとこういうの、パニックって呼ぶんだ。

「馬鹿でもないし、思いつきでもないし、勿論、俺とお前の話だぞ」

音の断片で私の言いたい事を察して返事してくれたのは、伊達に長い付き合いじゃないと褒めてやりたいトコロだけど、今の問題はそこじゃない。
なんとか論理立てて話そうと口をパクパクと開け閉めするのに、衝撃が凄すぎて考えがまとまらないし、言葉も出ない。

そんなプリーズした私を見た飯塚は「良い考えだろ?」と自慢気な顔でたたみ込んでくる。
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