大人の恋をしませんか?
ため息と一緒に吐き出した言葉に飯塚は満足そうに頷いた。

「良かった。それじゃ遠慮なく一緒に飲めるな」

「良くないわよ。32で旦那がいないどころか、彼氏だって何年もいないのよ?このままじゃ枯れたおばさん真っしぐらじゃない!」

「彼氏欲しいんだ」

「可能なら、ね」

だからって今の生活を変えるつもりはない。女が誰かに頼らなくても生きていける生活は貴重なのだ。

「どうしても欲しいって訳じゃないかな。今の生活にもそれなりに満足してるし。飯塚も私のことより、自分の事考えなさいよ。結婚、したいんでしょ?」

確か、昔一緒に呑んだ時に結婚願望があると言ってたはずだ。

「まぁな。でも相手が誰でもいいわけじゃない」

「そりゃあね」

でも、と考える。隣に座る横顔は端正とは言えないかもだが清潔感があって大抵の人に好まれるだろう。身長だって高いし、しゅっとしたスーツ姿もカッコいい。しかも一部上場の大企業に勤めるエリートなんだから選びたい放題じゃないだろうか。
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