大人の恋をしませんか?
「ん。でも大丈夫になったから」

「そっか、良かった。ま、私は週末なら大体ここだし、約束しなくても会えるしね。連絡要らないっちゃ、要らないか」

「だな」

数年前から大抵の週末、私も飯塚もここで呑んでいた。それは飯塚が転勤していなくなっても私の習慣で。

ふふっと笑ったら飯塚も嬉しそうに笑った。

「松浦がここで呑んでて嬉しかったよ」

「そう?」

「そう。松浦は全然変わってなくて、会うと安心する」

「成長してなくて悪かったわね」

テンポの速い軽口が心地よい。

入社した時から、ずっとこうだ。部署も職種も違ったのに、なぜかやたらと気が合った。

でもそれは男女の関係を微塵も匂わせないもので。実際、この十年の間には私も飯塚も恋人がいた事があるし、惚気も相談もした。

「そういやさ、お前は来ないの?本社の研究所への移動、話でてるんだろ?」
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