好きって言ってほしいのは、嘘つきな君だった。
「…笑うなよ」
「えへへ、嬉しくて」
ふいっと視線を逸らす大志の耳は真っ赤。
それなのに掴まれた手はギュッと離れないから、このバカを可愛くさえ思えた。
「桐原さん、」
「あ、今行きます!」
加賀さんに再び呼ばれてハッとする。
そうだ。私、呼ばれてたんだっけ。
「大志」
「…ん」
もういつまでもこうしてるわけにもいかないからと、私は名前を呼んでゆっくりと手を離してもらう。