好きって言ってほしいのは、嘘つきな君だった。



それから私は、大志、ともう一度奴の名前を呼んだ。




「私には、大志だけだよ。あんたがいればそれでいい」

「ッ…、」



それだけを言い残して、私は逃げるように加賀さんのところへ向かう。


真っ赤になっているであろうその顔を、どうしても見せたくはなかった。




「あれ、なんか桐原さん顔赤い?」

「へっ?あ、いや、ちょっと暑いなーと思って」

「そう?あ、それでこれなんだけどさ────…」



加賀さんに聞かれてしまって一瞬戸惑いはしたが、なんとかその場をしのぐ。


それから加賀さんの質問に答えていた私は、大志がどんな反応をしているのか知らなかった。




「…っ、ずりぃだろ、アレ…。つーかどこでそんなセリフ覚えたんだよ…」



ましてや、顔を真っ赤にしてテーブルに項垂れていただなんて、知る由も無い。




< 112 / 280 >

この作品をシェア

pagetop