好きって言ってほしいのは、嘘つきな君だった。
それから私は、大志、ともう一度奴の名前を呼んだ。
「私には、大志だけだよ。あんたがいればそれでいい」
「ッ…、」
それだけを言い残して、私は逃げるように加賀さんのところへ向かう。
真っ赤になっているであろうその顔を、どうしても見せたくはなかった。
「あれ、なんか桐原さん顔赤い?」
「へっ?あ、いや、ちょっと暑いなーと思って」
「そう?あ、それでこれなんだけどさ────…」
加賀さんに聞かれてしまって一瞬戸惑いはしたが、なんとかその場をしのぐ。
それから加賀さんの質問に答えていた私は、大志がどんな反応をしているのか知らなかった。
「…っ、ずりぃだろ、アレ…。つーかどこでそんなセリフ覚えたんだよ…」
ましてや、顔を真っ赤にしてテーブルに項垂れていただなんて、知る由も無い。