好きって言ってほしいのは、嘘つきな君だった。



「いや?奇遇だなーと思って」

「は?何が?」


意外にも出勤時間までもう数分猶予がある私は、お客さんがこいつしかいないのをいい事にその場でエプロンを付けながら話を聞く。




「や、俺も別れたから。今朝」

「………。は?」



が、その動きは大志の一言によって一瞬止まってしまった。




え、だってそんな話聞いてない。



「なんで言ってくれなかったの」

「忘れてた」

「んなわけないでしょ」

「じゃあ言うタイミング逃した」

「……もういい」



はぁ、とため息をついてエプロンの次に三角巾を付けた私は、私物を置きに厨房へと入っていく。


荷物を厨房奥のロッカーにしまい、職人さんに挨拶を済ませて再びホールへ出れば、「ガーリックサンド2つね」と何事もなかったかのように注文してくるバカがいた。




「飲み物は?」

「金欠だから水で」

「了解」



そして、そんなバカに普通に対応する私も負けてはいないと思う。



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