好きって言ってほしいのは、嘘つきな君だった。
◇ 自己暗示の末路
「桐原さん、これお願いできる?」
「………」
「桐原さん?」
「……え、あ、はいっ!何でしょう?」
名前を呼ばれてハッとした。
いけない、聞いてなかった。
目の前には、苦笑している加賀さんがいる。私は今、絶賛バイト中だ。
「これ、お願い出来るかなって。…どうしたの?なんか様子変だけど…」
「あ、別に何でもないです!すみません、ちょっとボーッとしてて」
ヘラっと笑って再び仕事を再開させれば、やっぱりいつものペースがどんどん落ちている。