好きって言ってほしいのは、嘘つきな君だった。



それだけじゃない。




「…さん、桐原さん!」

「!は、はいっ」


バイトでもそれはイヤってほど影響していた。




厨房に一番近い窓側の席。


そこに、あいつの姿が現れることももうない。



自分から切り離しておいて、あいつのいない生活に窮屈さを感じている自分にも腹が立った。




店内に流れている、今流行りの洋楽。


自分には縁のないはずの洋楽なのに、無意識に口ずさんでいる自分にハッとした。




「何やってんだ、バカ…」



心底自分に呆れて、落胆する。



自分のバカさ加減にこれはもう苦笑するしかない。



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