好きって言ってほしいのは、嘘つきな君だった。



「じゃあ、俺と行ってくれない?」

「へ?」


そんな私に誘いの声をあげたのは、今目の前にいる松永くんじゃない。





「桐原さんと行きたいな、夏祭り」



声のした方へと振り向けば、そこにはにこりと笑う加賀さんがいた。




「加賀さん…?」

「あ、急に誘ったから驚かせちゃった?」

「いや、そういうわけじゃ…」



なくは、ないんだけども。



ただただ、びっくりしたんだ。


まさか加賀さんに夏祭りに誘われるだなんて思わなかったから。




「ごめんね。けど俺、最近桐原さんが元気ない気がして。息抜きにでもどうかな?」



驚いている私に、それでも尚、加賀さんは誘いかけて来る。



加賀さんと行ったら少しは気も紛れるかな、なんてずるい考えが出て来てしまった。



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