好きって言ってほしいのは、嘘つきな君だった。



「あの、ご─────「待って」



ごめんなさい、と、言おうとしたのに。


加賀さんの人差し指が私の唇に触れて、それが遮られてしまった。




「もう少しだけ、俺のこと考えてくれないかな?」

「……へ、」

「桐原さんがあの元彼をまだ忘れられないのは分かってるから。…落ち着いてからでいいから、俺のこと考えて」




お願い、とまで言われたら、どう返したらいいのか分からなくなってしまう。



コクンと頷きそうになったけど、必死でその衝動を抑えた。




「……加賀さん」


スッと、握られた左手を離す。



向かい合って加賀さんの目を見た時、彼は何故か優しく微笑んだ。




< 229 / 280 >

この作品をシェア

pagetop