好きって言ってほしいのは、嘘つきな君だった。
「しっかりしてる子だなって。笑顔が素敵な子だなって。最初は本当にそれだけだったんだ」
「……、」
「それなのに桐原さんがあの彼にだけ見せる表情や行動が可愛くて、あまりにも特別だったから。それが自分に向けられたらって思うようになった」
加賀さんの優しくて穏やかな声色が、私の耳に響く。
こんな恥ずかしいことを真正面から真っ直ぐに言われて、照れないわけがない。
「けどね、」と加賀さんは続けた。
「今は桐原さん、彼のせいで泣いてるでしょ?」
「…っ、」
「その涙を、俺が拭ってやりたい。そのためならいくらズルくても付け入るよ、俺」
ポンポンと撫でる手が温かくて、思わず涙が出そう。
そして次の瞬間、加賀さんの手が私を人気の少ない裏まで引っ張った。
そのまま、加賀さんの温もりが私を包む。