好きって言ってほしいのは、嘘つきな君だった。



好きだよ、大志。


そう口に出来たらどんなに楽か。




目を見たらそう口にしてしまいそうで、私は下を向いて大志の真横を通り過ぎた。


いや、正確には通り過ぎようとしたんだ。それなのに。




─────パシッ

「舞」

「…っ」


大志が私の手を掴むから、それが出来なくなってしまった。




「舞がなんと言おうと、俺は舞と一緒に行くから」

「…どんだけ自分勝手なのよ」



思わず出てしまった憎まれ口。


本当、自分勝手でバカなんだから。




< 238 / 280 >

この作品をシェア

pagetop