好きって言ってほしいのは、嘘つきな君だった。
「な、に…」
名前を呼ばれて、それが声だけでも誰かわかるのに反射的に振り返ってしまった。
声が震えて、うっすらと視界が滲む。
「いいよ、裏行って来て。今空いてるし俺だけでも十分回せる」
そしてこの状況を客観的に見ている松永くんは、さらっとそう言って私の背中を押した。
「行こ、舞。少しだけでも話がしたい」
「…でも」
「いいから行っておいでって、桐原さん。早く」
真剣な大志と、それを渋る私。
そして同じバイトというだけなのに背中を押してくる松永くん。
松永くん。君は一体なんなんだ。
そう言いたい気持ちを必死に押し殺して、私は「5分だけだから」と制限時間を設けて大志とお店裏へ向かった。