好きって言ってほしいのは、嘘つきな君だった。



電話越しで、クスッと笑う大志の声が聞こえた気がした。


よく聞けば、背景でヒューヒューと風の音が聞こえる。




『窓の外見て、舞』


大志のその言葉で、反射的に体が動いていた。




カーテンを開け、窓を開け、見下ろした先にいたのは────…



「『ハッピーバースデー、舞』」




正真正銘、私が今一番会いたい人。





なんで、とか、もうそんなことを考える余裕すらなくて。


電話を切ることも忘れて、急いで部屋を出て玄関のドアを開けた。





「おめでとう言うには5分早かったな」



開けた瞬間に目の前でそうヘラっと笑う大志が愛おしすぎて、何も言わずにその体に抱きつく。




「…やっと舞を抱き締められる」


嬉しそうにそう溢したのが聞こえて、私の背中にも大志の腕が回った。



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