好きって言ってほしいのは、嘘つきな君だった。
どれくらいの時間が経ったんだろうか。
長いようで短い、そんな時間を過ごした後の私たちの会話は、驚くくらいの通常モード。
「誕生日に間に合った」
「…私すっかり忘れてたんだけど」
「俺はずっと覚えてたぞ」
「器用なやつ」
ふふっと笑って、もう一度ぎゅーっと抱き締める。
これ以上の愛の言葉なんていらないと思えるほど、私の心は一瞬で満たされていた。
「誕生日おめでとう、舞」
「ありがと」
大志のつけている腕時計が、0時を示した。
それが合図かのように、ゆっくりと重なる私と大志の唇。
「こんなに好きになるとは思わなかった」
「でも好きになってくれたね」
「本当、こんなに女に振り回されたのは初めてだわ」
やれやれ、なんて言いながらも大志は嬉しそうに笑ってくれる。
これ以上にないくらいに幸せな誕生日の瞬間を迎えて、いつの間にか溢れていた涙は嬉し涙へと変わっていた。