好きって言ってほしいのは、嘘つきな君だった。



もう少しで21時半だ。


カップルでも、家族ぐるみで付き合いのある幼馴染でも、実は兄妹!?パターンでもない。



そんな2人がこんな時間に一緒にいるなんて明らかに不自然すぎる。


絶対に彼女がよく思うわけがない。




のに、このバカは平気な顔をして彼女に言ってのけたのだ。




もう私の方が気が気じゃない。


大志が彼女と別れるんじゃないか、とかいう心配ではなく、私に逆恨みが来るんではないか、という心配の方で。




だって怖いもん。女の逆恨み。



ただでさえ "桐コンビ" でよく思わない大志ファンに目をつけられているのに、これ以上敵を増やされては困る。




あ、大志と別れてくれるのは全然OKだからね。


というか早くそうしてほしいくらいだし。





「あ?あ、おいちょっと!」


突然、大志が焦った声を出した。



次の瞬間、ツーツーと機械音が漏れ聞こえる。




「…ったく、ユカリのやつ切りやがった」


はぁ、とダルそうに呟いた大志はスマホをポケットにしまう。



これからの彼女の逆恨みを考えて憂鬱になる反面、性格の悪い私は少し喜んでしまった。




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