好きって言ってほしいのは、嘘つきな君だった。
「……ばか」
「んだよ。そこは "ありがとう" だろ?」
さっきの低い声とは全然違いすぎるその笑顔に、思わず私は可愛くない言葉を口走ってしまう。
だって、だって。
こんなの、ズルすぎるよ。
カッコいい、なんて言葉じゃ片付けられない。
「…ありがと、大志」
「ん。どういたしまして」
やっとのことでお礼を言えば、大志はポンと私の頭を撫でてくれた。
その後、店内から拍手喝采が起きたことは言うまでもない。
「にしても、"防犯カメラ" なんて嘘、よく思いついたよね」
「いやー、あのおっさんもよく騙されてくれたよな」
ヘラっと笑う大志に、私もつられて笑う。
その後、藤田さんが現れることはなかった。