花歌う、君の空。
「おい、ミナ。お話中 ワルィけど、お前保健室に用があるって言ってなかったか?」
さっきまで彼と一緒にいた内のひとりの男子が、不意に近づいてきてそう声を掛けると、湊くんは自身の腕時計をチラっと見て、やべ、と小さく声を漏らした。
「俺 大事な用があるのでこれで!引き留めちゃってごめんなさい」
「ううん、大丈夫です…!」
「それじゃまた!行こう、龍」
彼は軽く会釈をしてそう言うと、一度振り返って「また声掛けますね」と念を押してから友人達の元へ駆け足で帰っていった。
私はその後ろ姿を、ただ呆然と見つめていた。
「夢…………じゃないよね?」
数歩後ろで 同じく呆然と立ち尽くしていた梨奈が、気の抜けたような声で呟く。
「………夢みたいな話だけどね」