花歌う、君の空。

だけど何故だか龍は、菜花先輩のことをよく思っていないらしく、俺が菜花先輩の話をすると決まって機嫌を損ねる。


「はぁ………一体、菜花先輩の何が気に入らないんだよ、龍はさ」

「…………あの女と居たらミナは辛い思いするだけじゃねーか」


なんとか幸せにやってる今を あの女に壊される気がする、と龍はいつにもなく真剣な顔で言った。



龍の言いたいことは、痛いほど理解出来た。

そして、俺にそんな言葉を言ってくれるのは、龍だけだ。




だって龍は……俺のちょっとした"秘密"を知る、数少ない友人なのだから。




俺の全てを知ってしまっているだけに龍は、こうして鬱陶しいほどに俺を心配してくれる。だから、こうして忠告してくれることは少なからず嬉しいんだ。それに、俺はその内容にいつも納得している。

だから今回も、龍の言い分は正しいと思った。

……と言うよりも、俺も最初から同じことを考えていた。


「──分かってる。別に俺、菜花先輩と付き合いたいとか思ってる訳じゃないよ」


そんなことをしたって、双方が辛い想いをするだけだって、ちゃんと分かってる。

そもそも俺は、もう一生 誰かに恋をしたりしないだろう。


だから、だから俺はただ………




「菜花先輩の笑顔を、もう少し近くで見守っていたいだけなんだ」