神様、私を消さないで
なんだか、まだ信じられない。

ここまで生徒が少ないとは思わなかった。


「空野さんは東京から引っ越してこられました」


校長先生の声に、いくつかの歓声が上がった。

東京、って言っても端はしっこのほうなんだけど……。


「そして、同じ中学2年生がもうひとりいます」


その言葉に、隣にいる男子生徒に意識を向けた。

彼は緊張した様子もなく、「樋口大和です」とだけ口にした。

小さいけれど、よく通る声だった。

顔ははずかしくて見られない。

校長先生が話を続けるなか、ぼんやりとあたりを見回す。


それにしても……あまりに田舎だ。

田舎ならば土地は余っていそうなものなのに、異様に狭い校庭に小さく古い旅館のような木造の校舎。
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