汽笛〜見果てぬ夢をもつものに〜
そして迎えたホームルームの時間、事は思い通り進み山田は驚愕した。
あまりの状況に両隣のクラスから教師の中島と古田が乗り込んできた。
騒ぎを止めようと古田が龍二達四人を何発か殴ったが椅子や机を振り回し応戦、龍二は職員室で話されたことを盾に猛抗議した。
その勢いで今度は校長室に4人で乗り込み、校長の日下部健夫に騒ぎ立てたことを先に詫び、山田の行為と古田の暴力行為を批判し教育委員会へ話しをすると冷静に話した。
日下部は事を荒立てたくない考えがあり、龍二達に山田と古田を謝罪させることで話しを収めようとしたが、龍二は納得せず、校長の監督不行届という内容の文書と山田と古田に謝罪文を書かせることで最終的に合意した。

そしてこの行為がきっかけで教師との葛藤が三年間続くのであった。
事あるごとに龍二は教師の目の敵され、テストで良い点を取っても学期毎に配られる成績表は面白いように急降下した。
親は龍二の成績低下と不良になっていく姿を心配した。
龍二自身も親を欺くことに罪悪感を感じていたが"闘い"だと言い聞かせ一定の距離をおいた。
そして事ある毎に仲間と悪事を繰り返したが、知能犯である龍二は親の呼び出しは一度もなく警察の厄介になることもなかった。

迎えた高校受験、龍二は進学を拒んだが、せめて高校くらいはという親の期待もあり受験した。
生活はあまり裕福でなかったので親の期待通り公立高校に合格したが内申書が悪いと考えランクの低い高校を選んだ。
しかし、大して嬉しくもなくごくごく当然と受け止め、また三年間教師を構うのかという思いに掻き立てられていた。

中学の卒業式を迎え、龍二は何の感慨深さもなくただ冷めた目で見つめていた。
早春の三月は桜もまだ七分咲きだが近くの駅には花見見物の臨時列車が到着の合図をする汽笛を鳴らす。
汽笛の音色に龍二は三年前、あの列車の旅を思い出していた。
桜は寒い日があり暖かい日があるから咲く。
暖かい日しかなければ咲かない、寒い日しかなければ咲かない花だ。
龍二もまた、優等生の時代があり劣等生の時代があるから俺も咲くのだ、と感じ既に自分は開花させた人間だと考えていた。

しかしこの後、高校で出会う教師が今までの教師とは違い龍二を真っ向から否定しぶつかり合う中で本当の夢を見付けることになるなど、このとき知る由もなかった。
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