イジワル男子の甘い声





「…パパ」


「座りなさい」


家に帰ると、いつもいないはずのパパがダイニングテーブルの椅子に座っていて、

腕組みをして私にそう言った。


「昨日どうして休んだんだ。説明してくれ」


「えっと…」


「双葉はもっとしっかりしてると思ってた。言わなくても自分の管理はしっかりできる大人だと思ってた」


「っ、」


制服のスカートをギュッと握り締める。


何も言えないのは、言い返してパパに本当に嫌われるのが怖いから。


「…ごめんなさい」


変わったのはパパの方なのに。
まるで私のことをおかしいものを見るみたいな目で見る。


「はぁ…母親がいれば違ったのかな」


っ?!


何それ。


「仕事の関係で最近よくしてくれる方がいてな」


はぁ?


「今度、双葉にも紹介──────」


「ごめん、私、夕飯の買い物行かなくちゃ」


パパのセリフの続きなんか聞きたくなかった。夕飯の材料なんて、一人で食べてるんだからまだまだ有り余ってるのに。


「双葉、話はまだ終わって────」



私はそう言って、逃げるようにマンションを後にした。


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