イジワル男子の甘い声
しかも、なんであんなことがあって、柏場は何事もなかったように私の話せるのだ。
「おい」
開いた自動ドアに入った柏場が声をかけてくる。
「早く入れ」
そう言われて、ブンブンと顔を横に振る。
「めんどくせぇな」
パパやミカたちには絶対思われたくないことを、柏場にはすぐに言われちゃうし、私も彼には散々そういうことをしちゃう。
もう嫌われてるからいいんだって、開き直ってるところがあるから。
「うん。面倒くさいよ。わかったから早く行ってよ」
「うぜえ」
「……」
こいつがsakuだって、未だに信じられないよ。
自動ドアが、閉まり出そうとした瞬間。
私より白いんじゃないかと思うくらいの長い手がこちらに伸びてきた。
「ちょっ──────」
っ?!
一瞬。
そして前にも似たようなことがあったな、なんて思い出して。
あの時は、私は自分から向こうに飛んだのだけど。