イジワル男子の甘い声
「なんで─────」
「入れなかったら入れなかったで文句言うんだろ」
「そんなこと───」
ないとは言えない。
でも、今は柏場に文句を言うほどの元気を持ち合わせていないんだよ。
「気持ち悪っ。前はあんなに騒いでひとんちズカズカ入ったと思ったら。やっぱりそこ気に入ってんの」
柏場はそう言って、アゴで、前に私がうずくまってた方を指す。
「…そうかもね」
柏場の言葉を完全無視してテキトーに答える。だって、ここに入ってこれたって私には家に帰る予定がないもんで。
パパが早く外に出てくれたらいいんだけど。
ここで鉢合わせするのもなんだかと思うし。
パパが外に出て行くってことは、私の知らない、多分女の人に会うってことで。
それを思い出して、また鼻の奥がツンとする。