イジワル男子の甘い声
「気持ち悪いって…もっと言い方ってもんを知らないのかね!」
「知らねー」
まったく…。
これって柏場が私を心配してるってことなの?いや、そんなことないと思うんだけど。
「柏場くんに関係ないでしょ」
「不快」
「うっ、」
どっちがそんな顔をさせてるって…。
自分がそんなに顔に出やすい人間だってことも恥ずかしいんだけど。
少なくとも、柏場とパパ、2人のせいである。
「って…」
「は?」
ボソッと呟いた私に、柏場が不機嫌な声で反応する。
こんなこと、まだ認めたくないはずなのに。
今の私にそんな余裕がないのが自分でわかる。彼の声にすがるくらい、余裕がない。
「…歌ってほしい、」
やめるなんて、言わないで。
どんなに頭を回転させて考えたって、私に残されているのはこれしかなかった。
家のことで寂しい時、助けてくれたのはいつだってsakuの声だった。