イジワル男子の甘い声
「フフッ」
「急に笑うな。もともと気持ち悪いのが余計気持ち悪いぞ」
「う、うるさいなぁ〜」
安定して意地悪で一言多いけど、私はこの時間が好きらしい。
パパとのことで落ち込んでいたけれど、まさか柏場といて少しだけ楽になるなんて。
だから余計、気になってしまう。
『ごめん……ミズキ』
柏場の言っていたミズキさんって、誰なの?
ずっと柏場が想ってる人?
その人がいるから、今まで誰とも付き合わなかったの?
「お前さ、もう平気なの」
「え、」
突然柏場に話を振られて、多分すごい間抜けな顔で柏場を見たと思う。
「俺がsakuだって」
「ああ…」
少し口ごもってしまう。
初めは戸惑っていたし、ショックだったけど。
改めて柏場の顔を見て、彼の前で子供みたいに泣いて。
気付けばあまりそのことを考えなくなっていた。
柏場がどんなに私に意地悪を言ったって、みんなに悪態をついたって、やっぱり私の中でsakuの歌声が一番だってことは変わらない。
sakuの正体が柏場だってわかった上で彼の歌声を聴いても、癒されたのは事実だ。