イジワル男子の甘い声


「フフッ」


「急に笑うな。もともと気持ち悪いのが余計気持ち悪いぞ」


「う、うるさいなぁ〜」


安定して意地悪で一言多いけど、私はこの時間が好きらしい。


パパとのことで落ち込んでいたけれど、まさか柏場といて少しだけ楽になるなんて。


だから余計、気になってしまう。


『ごめん……ミズキ』


柏場の言っていたミズキさんって、誰なの?
ずっと柏場が想ってる人?
その人がいるから、今まで誰とも付き合わなかったの?


「お前さ、もう平気なの」


「え、」


突然柏場に話を振られて、多分すごい間抜けな顔で柏場を見たと思う。


「俺がsakuだって」


「ああ…」


少し口ごもってしまう。
初めは戸惑っていたし、ショックだったけど。

改めて柏場の顔を見て、彼の前で子供みたいに泣いて。


気付けばあまりそのことを考えなくなっていた。


柏場がどんなに私に意地悪を言ったって、みんなに悪態をついたって、やっぱり私の中でsakuの歌声が一番だってことは変わらない。


sakuの正体が柏場だってわかった上で彼の歌声を聴いても、癒されたのは事実だ。


< 228 / 374 >

この作品をシェア

pagetop