イジワル男子の甘い声
「あぁ。何かと俺のところに現れてはこき使って、バカでアホで泣き虫で…」
「ちょ、、それ悪口…」
「ぶっさいくな笑顔に、会いたくなった」
「…優っ、」
「なのに帰ったらすっげぇ気持ち悪い顔して俯いて雨に打たれてんだもんな。そりゃムカつくよ」
なるほど…。
だから優はあの時、そんな顔させてるのは誰なんだ、なんて聞いたんだ。
でも…。
まさか優がそんならつらい思いして帰ってきたなんて思わなかったよ。
「ごめんなさい。何も知らなくて」
「謝るな。多分俺にとってお前の笑った顔は失いたくないものなんだ。実際、歌って見せた時のお前の顔に救われたんだから」
「っ、、!」
優は、私の両頬を大きな手で包み込む。
「お前の親父さんの記憶にはまだちゃんとお前がいるだろう」
「っ、」
「俺は、もういない母親たちのことでうじうじするのはやめる。お前を信じるって決めたから。けど、お前はちゃんといるだろう。話さなきゃいけない人」
また目頭が熱くなって、スーッと目から温かいものが流れ落ちる。
私の涙で優の手は濡れたかも。
だけど、止められない。