イジワル男子の甘い声
「もしかして…優…私がパパのことで落ち込んでるってわかってて…?」
だから突然デートに誘ったりなんか…。
「気分転換に、なればいいなと。あとちゃんと自分の話もしたかったし」
「っ、」
優しい優の目は、そらすことを知らなくてまっすぐと私の瞳を捉えて離さない。
こんなに考えてくれてるなんて…内心すごく驚いている。
「ちゃんと、親父さんと話しなよ」
そう言って頭に置かれた優の大きな手。
あったかくて、優しくて。
絶対に忘れたくないって思ったし、この優しさを無駄にしたくないって思った。
「ありがとうっ、優…」
「っ、早く食べねぇと全部食うぞ」
優は突然そっぽを向くと、そう言いだしてお箸を動かした。
「えっ、ちょ、まって」
私だってお腹空いてるし!
慌てて、食べられないようにと卵焼きにお箸を伸ばした瞬間─────。
っ?!
唇に柔らかいなにかが触れたと同時に、視界は目をつぶった優でいっぱいになった。
急にキスするなんてずるい。
体中が一気に熱くなる。
「冗談。そんな慌てなくても全部食べねぇよ」
「優の冗談は本当にわからないっ!」
「フッ、」
っ?!
優は少し意地悪な笑みを浮かべながら、おでこをくっつけたままもう一度、私の唇を奪った。