イジワル男子の甘い声





「よし、できた」


─────ガチャ


ダイニングテーブルにおかずを詰めた弁当箱を置いた時、タイミングよくパパの部屋のドアが開いた。


「あっ、お、おはようっ…!」


久しぶりに顔をちゃんと見て、なんだか途端に緊張した。


2人で毎日一緒にご飯を小さいアパートで食べていた朝がすごく昔のことみたい。


「っ、あぁ。悪いけど、お昼は会社の人と外で食べるから────」


「えっ」

テーブルに置かれた弁当箱を見て悟ったのか、パパは目をそらして洗面所の方へと向かっていった。


やっぱり、パパとの関係を修復するなんて無理なのかもしれない。


些細なすれ違いが、気付けば大きな溝になっていて…。どうやってパパと接していたのか自分でもわからない。


でも───────。



< 313 / 374 >

この作品をシェア

pagetop