イジワル男子の甘い声
高校生にもなって、親の前で泣くなんて。
恥ずかしい。
寂しいとか、恥ずかしいとか…。
でも、一言出たらそれは溢れるようにポロポロ涙と一緒に落ちてくる。
「私はっ、こんなに広い家じゃなくてもいいよ、前の家でだって…十分幸せだった。パパがいれば、それでよかったよ」
ピシッと綺麗にアイロンされたシャツも、私が強く握りしめたせいで台無しだ。
「双葉…」
「もう高校生なのに…こんなわがまま言ってごめんなさいっ、だけど…すごく苦しくて。パパがもう私のことどうでもよくなっちゃったんじゃないかって…」
優や優の歌声のお陰で、ある程度の寂しさは紛れたことは確かだ。
でも、パパでできてしまった寂しさの穴は、きっとパパでしか埋められない。