イジワル男子の甘い声


高校生にもなって、親の前で泣くなんて。
恥ずかしい。


寂しいとか、恥ずかしいとか…。


でも、一言出たらそれは溢れるようにポロポロ涙と一緒に落ちてくる。


「私はっ、こんなに広い家じゃなくてもいいよ、前の家でだって…十分幸せだった。パパがいれば、それでよかったよ」


ピシッと綺麗にアイロンされたシャツも、私が強く握りしめたせいで台無しだ。


「双葉…」


「もう高校生なのに…こんなわがまま言ってごめんなさいっ、だけど…すごく苦しくて。パパがもう私のことどうでもよくなっちゃったんじゃないかって…」


優や優の歌声のお陰で、ある程度の寂しさは紛れたことは確かだ。


でも、パパでできてしまった寂しさの穴は、きっとパパでしか埋められない。

< 316 / 374 >

この作品をシェア

pagetop