イジワル男子の甘い声


「…ずっと」


黙って聞いていたパパが始めて口を開いた。

そう言えば、最近はタバコの匂いがしない。


「ずっと、パパは双葉のこと考えてるよ」


「…っ、」


「昇進だってそれに伴っての新しい家だって。双葉にとってそれがいいことだと思ってたんだ。他の子達と同じ生活をさせてあげたいって思った。お金のことで困らせたくなかった」


「パパ…」


初めて聞いたパパの心の言葉。


「昇進すると一緒に働く新しい先輩や同僚たちの家族の話しをよく聞くようになって」


「話し…?」


「みんな、子供に習いごとをさせていたり、本物に触れて欲しいってブランドものを与えていたり。子供が大人になった時恥をかかせないようにだって」


「本物…」


そりゃ私はブランドものなんて持ったことがないし、お金がなかったから塾や習い事にも行ったことがない。


小学生のころ、バレエを習ってる友達を見て、ちょっといいなって思ったことはあったけど。


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