イジワル男子の甘い声


「正直パパもびっくりして、ちょっと格が上がるだけで随分世界が違うなって思った。それと同時に、双葉が大人になった時恥ずかしい思いをするかもしれないって恐怖が生まれた」


「恐怖…」


「徐々に、必死に働いて稼ぐことが今のパパが双葉にできることだって考えに変わって。実際、学歴や資格や経験の少ないパパは今の部署について行くのは結構大変で…双葉にはこんな思いさせたくないなって」


「じゃあ…パパは…私が嫌いになったから仕事ばかりしてたんじゃなくて…?」


「なんだそれ。そんなわけないだろう」


ちょっと怒ったみたいにそう言い切るパパ。
あんなに悩んでいたのに、スーッと固まっていたものが溶けていく。


「話す時間も取らないで、これがずっと双葉のためなんだって勝手にほっといて。ずっと辛い思いさせてごめん。本当に…ごめんっ」


言葉にするだけで、こんなに変わるんだ。


素直に一言言うだけで…。


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