イジワル男子の甘い声


「それはない」


「なんで言い切れんの」


「あいつのアドレス見ればわかる。まじでなんも知らねーの?おかしいんだよ。俺の話し聞いてないと思ったら突然テンション上げて話し出したり、急にくっついてきたり」


「双葉ちゃんの場合それは普段通りにも思えるけど。あ、寂しいんじゃないの?ほら、優作そういうの疎そうじゃん。そんなんだと愛想尽かされるよ?乙女心には敏感でないと」


乙女心?
いや、そういう感じではないんだよ。
確かに百面相が得意なやつだけど。
俺がどんなに抱きしめても、キスしても、常に悲しそうな表情を一瞬浮かべる。

全部解決したはずなのに。


まるで、何か隠してるみたいな。


「気になるんなら直接聞いた方がいいんじゃない?」


「でも…」


「双葉ちゃんがパパさんのことで悩んでた時、一歩踏み出せって背中押したのは優作の方なんでしょ?そんなアドバイスしといて、自分は逃げるの?」


「…逃げるって…俺は別に…」


いや、多分ノアのいう通りだ。
ムカつく。
こいつは俺の全部を見透かしていて、どこか冷静で余裕で。
敵わないな、と正直思うよ。


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