イジワル男子の甘い声
「安心しろよ、優作」
「……っ、」
いつもヘラヘラしてるくせに。
こういう時だけ、まるで俺の兄貴だって言いたいみたいに、頼もしい素振りを見せてきやがる。
「双葉ちゃんは、いなくなったりしない。お前から逃げたりもしない。俺が保証する」
「……っんなこと…」
ムカつく。
そんなこと俺が一番わかってる、そう胸を張って言いたいのに。
自分の中でどんどん双葉の存在が大きくなっていくたびに、失ったらどうしようって怖さが、不意に襲ってきてしまう。
情けない。
そんな自分にムカついてしまう。
そうだよ。双葉は離れて行ったりなんか…。
「優作がその程度の気持ちで双葉ちゃんと付き合ってんなら、俺が奪うよ?」
「はぁ?おまっ、」
「その程度じゃねーって、バカみたいにでけぇって、ちゃんと証明しろよ」
っ?!
ほんっとムカつく。
「絶対渡さないし」
「さすが俺の弟」
「やめろ。お前の弟になんか死んでもならん」
「はいはい」
絶対に、口に出さないと決めているけれど、ノアが命の恩人で、俺より何百倍も男でもかっこいいのを知ってる。
だから余計、ムカつくんだ。
『ありがとう』
なんて。
まだ絶対言ってやんねぇし、言うつもりもねぇ。