イジワル男子の甘い声








「じゃーん!アップルパイっ!りんごね、里菜さん親戚の人からたくさん送られてきたからおすそ分けだっていってもらったの!だから作ったちゃった!」


ピンポンとチャイムが鳴り、玄関を開けると、


ニコニコと楽しそうな笑顔を浮かべた双葉が、三角に切られたアップルパイを2つ、お得意のタッパーに入れて持ってきていた。


「……」


「あ、もしかして…し、仕事中だった?ごめん。それなら出直して…っ、」


ぼーっと彼女を見ていたせいで、引き返そうと体を後ろに下げようとした双葉の腕を慌てて捕まえる。


「違う。食べる」


我ながらそっけない言い方だと思う。
もっと優しい言い方ができたらいいのに。
素直に、来てくれて嬉しいって言えたらいいのに。

< 346 / 374 >

この作品をシェア

pagetop