イジワル男子の甘い声
「ごめんなさい。優、ごめんっ」
「突然謝られても困る」
一体、何に対してのごめんなのか。
もしかして、ほかに好きな奴が出来たとか?
「…っ、」
「双葉」
クイッと彼女の顎を持ち上げて名前を呼ぶ。
全部受け止める覚悟で、でも、好きな奴ができたとかだったら、それこそおかしくなってしまうだろうと思ったり。
後者でないことを祈る。
「…っ、ひ、、引っ越すことに…なったの」
「……」
あまりの衝撃で一瞬言葉が出なかった。
「決まった時、すぐに話したかったのに。一度言うタイミング逃したらどんどん言えなくなって…」
「どこに…」
学校は変わってしまうのか、会える距離なのか。
心臓がばくばくとあまり良くない音を鳴らしている。不安からくる音。
「パパの友達が農家やってるって田舎に…」
「……」
「新幹線で3時間くらいのとこで…」
わからない。
彼女が隣にいたことが当たり前になりすぎていて、ピンとこない。
ドッキリではないことはわかるけど、半分思考停止って感じ。