イジワル男子の甘い声


バスが動き出すと、すごく静かで。


わんわんと別れを惜しみながら泣いたさっきの時間が夢だったのかもしれないなんて思うくらいだ。


「優…やっぱり来れなかったか…」


ピロン


スマホが鳴って、ちょっと期待して画面を開くと、昨日、先に引っ越し先に向かったパパからの画像だった。



『無事にバスに乗れたかな?』


そんなメッセージと一緒に、たくさんの色とりどりの野菜の写真が送られてきた。


『今日の夕飯はご馳走だ!』


メッセージが途絶えてたトーク画面も、今では毎日動いてる。


あの時、優が背中を押してくれなかったらなかったかもしれない時間。


「優…」


やっぱり、最後は会いたかった。
仕事があるって、昨日本人もすごく落ち込んでくれていたけれど。

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