イジワル男子の甘い声
一晩だけ
*
────パチッ
「お〜」
電気のスイッチを押す音が聞こえると、パッと目の前が明るくなって、そこには茶色と白を基調としたシンプルな家具がいくつかあった。
「間抜け面で人の家ジロジロ見るな」
スッキリしてるのにすごくお洒落なリビングをぼーっと眺めていると、すぐ柏場に注意された。
間抜け面とか…いちいち一言多いよなぁ。
荷物だって、スーパーまでの帰り道一度も持ってくれなかったし。
まぁ、いいんだけど。
「っていうか、柏場くん本当になんでもいいの?」
ハッと顔を上げてそう聞くと、ここの住人はリビングのソファで寝転がっていた。
「お前が腹減ったってうるせんだろ。好きなもん作れば」
「…は〜い」
この人は、人とか食にもっと興味とかないんだろうか。
もうこれ以上お前に付き合うのはごめんだ、ってオーラ全開の柏場くんに
「キッチンお借りしまーす」と小さく声を出してから、
スーパーのレジ袋から、買った材料を取り出した。