イジワル男子の甘い声
「グフフフッ」
気持ち悪い声を出しているのは重々承知なのだけれど。
こんなにキラキラした宝物を見て、そうならない方がおかしい。
顔は一切出さないけど、彼が雑誌でインタビューを受けた時の切り抜きや、彼が今まで出した3つのCD。
私の大切な宝物。
パパが仕事で忙しくなって1人のことが増えたけど、私はsakuの声で頑張れる。
どれもカバー曲ばかりだけど、彼が歌うとよりスッと心の中に入ってくるんだ。
────パチンッ
よしっ!!
スピーカーから流れる曲が止まったと同時に、引き出しを閉めて、自分の頬を両手で叩く。
寂しい顔なんかしちゃダメだ。
頑張るぞ!
心の中でそう叫んでから、部屋のスピーカーを消して。
まだ慣れない大きな部屋を出た。