好きって言って、その唇で。
「先輩」
今まで一緒に仕事をこなし良き仲間としてやってきた先輩がそこにはいて、愕然とした。
ごめん、口だけ動かしてそう伝えてきたのに気付いた私は心の底から舌打ちをしたい気分になった。
女心と秋の空。
使い方が違うかもしれないけどこんなにも簡単に態度や立場が変わるなんて。結局は私はその程度でしかしかないということだ。
「……何を思ってこんなことしてるのか知りませんけど、次こういうことしたら社会的な制裁を下しますよ」
「や、やれるものならやりなさいよ。証拠もないくせに」
全く怯んだ様子のない私に逆に気圧されたのか女達は動揺したように後ずさる。
トドメと言わんばかりに私が満面の笑みを浮かべると、こいつヤバい奴だよ、気持ち悪い!と吐き捨てて駆け足で去っていった。
「どの口でヤバい奴だっていうのよ」
濡れたスカートの裾をつまみ上げて、私は深いため息をついた。
着替えとかないのにどうしよう。