【短】Virtual Reality
なのに。
「藍那ー?眉間にすっごいシワー…」
なんて、声を掛けられたら。
そこからへにゃへにゃと力が抜けてしまいそうになる。
「ねぇ?那岐わんこ?」
「…なんで、わんこ?」
「いいから。私の声、ほんとに聞いたの?聞こえたの?」
「うん!苦しいって言ってた。もう無理って。限界だから、誰か助けてって、藍那ずっと泣きたいの我慢してたよ?」
「…なんで、そう思うの?」
「んー?そりゃあさ、毎日何度も顔見てれば、藍那の事なら何でも分かるよ?だって、藍那のデータは俺ん中に全部あるし。…あ、この間の飲み会で隣だった奴の、押し売りみたいなIDは消去しといたかんね?全く、油断も隙もない…ほんと、藍那は人良過ぎだよー?」
そう言って、何やら最近の私の行動を、ブツブツ言い出した那岐に両手を上げて降参した。