【番外編】狼社長の溺愛から逃げられません!
「美月ちゃんって、休みの日とかいつもどのへんで遊んでるの?」
「えっと、休みの日はたまった家事をして、のんびりしてるうちに一日が終わっちゃって」
「あ、ひとり暮らしなんだ。どこに住んでるの?」
あんな男、無視して放っておけばいいのに。律儀に答える有川を見て、なぜだか微かにいらだちを覚える。
「有川」
わざと威圧的な声を出して名前を呼ぶ。
すると有川の小さな肩がびくりと跳びあがり、こちらを見た。
「はいっ!」
黒目がちの目をまんまるにして子供みたいな返事をする有川に、無言であごをしゃくる。
有川は広告代理店の男に会釈をして、ぱたぱたとこちらに駆け寄ってきた。
「なにやってんだ、お前」
配給会社の社員が広告代理店の営業に試写会でナンパされてんじゃねーよ。
そう思いながらにらむと、有川は無邪気な笑顔でこちらを見上げる。
「社長! あの代理店の宮田さん、映画にすごく興味を持ってくれたみたいです! いろいろ質問してきてくれて……」
やわらかそうな頬を赤く上気させて、顔を輝かせて言う。