【番外編】狼社長の溺愛から逃げられません!
「……バカか」
「バカ?」
俺の言葉に有川がきょとんとして瞬きをする。
違うだろ。
あの男は映画に興味を持ったんじゃなくて、お前に興味があるんだろうが。
あんなあからさますぎる下心に気づかないなんて、いくらなんでも鈍感すぎる。
大丈夫かこいつ。
悪い男に簡単に絆されてだまされそうだな。
まぁ、こいつが誰に騙されて泣かされようが、俺には関係ないことだけど。
そう思いながらため息をつく。
「社長?」
不思議そうな顔でこちらを見上げる有川に、もう一度ため息をついて「もういいから、仕事に戻れ」と短く言う。
首をかしげながらぺこりと会釈をして、もといた場所に戻る有川。
その後ろ姿をながめながら、そばにいた内田に「おい」と話しかけた。
「はい」
すぐに返事をする内田は、俺と同い年だ。
三年前に他社から引き抜かれ、『シネマボックス』の社長になった俺よりも、ずっとこの会社での勤務歴が長い。
仕事もできるし、機転が利く。