【番外編】狼社長の溺愛から逃げられません!
 

有川が付き合っているという広告代理店の男は、いい噂を聞かなかったから。

彼女がいるのにすぐに女を口説くとか、仕事関係のタレントや女優に手を出そうとするとか。
有川とほかの女と二股をかけているという噂も聞いた。

こんなところにひとりこもって泣いているなんて、きっと男と別れたんだろうな。
そう思いながら、煙草をくわえ火をつける。

悲しみを紛らわす方法なら、いくらでもあるのに。
周りの奴らに元カレの悪口を言いふらしたり、やけ酒をしたり、買い物で発散したり。

それなのに、わざわざ会社の試写室にこもってひとりきりで映画を見る有川の不器用さがなんだかかわいいと思ってしまう。

バカだな。あんな男、最初からやめておけばよかったのに。
ふーっと長く息を吐きだすと、煙草の煙に気づいたのか、有川がこちらを振り向き跳びあがった。

「こんなところで、なにしてるんだ」

目を見開いた有川にそう問うと、驚いた表情がみるみる変わり後ろめたそうに肩をすぼめる。

「社長……! すいません、勝手に試写室を……」

慌てて頭を下げる有川に、煙草をくわえたまま近づいた。
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